海外旅行に行ったとき、その国や地域のことをもっと知りたい、もう少し長く暮らしてみたいと思ったことはありますか?

学校を卒業して社会人として会社で働き始めると、多くの人が長期間の休暇を取って旅行をゆっくりと楽しむことが難しくなります。特に海外へ渡航するとなると、お金のゆとりの有無のほかに、時間的な制約も付きまとうからです。

旅行と仕事をいつか両立させたい、大好きな国や地域で働きながら暮らしたいと考えた場合、それに適した仕事を見つけて稼ぐことと同じくらい、あるいはそれ以上に強力なのが「固定費を抑える」という選択です。

固定費を抑えることは、ただの節約や我慢ではありません。心に余裕をもたせ、理想を実現させる戦略のひとつです。

私たち夫婦も、収入が上がっても生活水準を大きく上げず、固定費を低く保つことで10年前から考えられないほど自由な時間を手に入れました。

この記事では、なぜ固定費を低くコントロールすることで場所や時間を問わない働き方を実現できたのかの理由と、無理のない家計の整え方を紹介します。

叶えたかったのは「旅行」ではなく「暮らすように旅すること」

はじめに、固定費を抑えることを重要視したきっかけについて書いていきます。

独身の20代の会社員のとき、有給休暇をどうにか取得。石垣島のウィークリーマンションを拠点にして、波照間島や黒島、竹富島といった離島巡りをするひとり旅に約3週間出かけました。

旅行より一歩踏み込んだ「暮らすように旅をする」体験は素晴らしく、これが自分の人生で叶えたいことかもしれないと気づきました。夫と出会ったとき、このような同じ価値観に惹かれてすぐに意気投合して今に至ります。

台湾での生活

石垣島ひとり旅と同じ年の秋、仲が良かった職場の同僚と2人で初めての台湾旅行に行きました。そのとき、街中の雑踏を眺めていた同僚が「日本と台湾はこんなに近くてもやっぱり全然違う、ここは海外なんだって感じるよね」と言って、本当にその通りだと思いました。

当時は台湾のことも言語も全く知らなかったのになんとなく懐かしさを感じ、いつか暮らすことになるような気がしました。

その後なんだかんだ条件が重なり、流れるままに、台湾の離島の澎湖(ポンフー)で生活をすることになりました。

国内の地方移住でよく耳にしていた「田舎だから排他的かもしれない」という不安はあっという間に消えました。澎湖の人たちは、中国語で熱情(ラーチン)と表現されるそのままの明るく非常に親切な方が多かったです。

近所のおばちゃんやおじちゃんと雑談中に、延々と台湾茶を注いでくれるエンドレスチャー(仮)の強力カフェインパワーで夜中に眠れなくなったり、家に帰ったら部屋の修繕や改善のため作業中の大家さんかその旦那さんがいる、みたいなことはふつうだったり、台湾の田舎ぽさのある温かい生活ができました。

早朝、大きな音で目が覚めて驚いてバルコニーに出ると、下の道路を戦車が長い列をなしてゆっくりと走行していたことも記憶に残っています。そんな非日常と、純粋に食べ物が美味しいと感じる穏やかな日常が同じ町にありました。

ヘチマの炒め物(蒸し焼き)は、食堂で店主が作っている様子を横目で見ながら覚えた料理です。澎湖はヘチマの名産地で、食堂や家庭でよく使われる身近な野菜でした。

帰国後に記憶を頼りに作ってみたところ、それらしい味になったので今でも夏になると食卓に並びます。

和歌山県産のヘチマを近所の八百屋さんに取り置きをお願いしており、毎年この季節を楽しみにしています。澎湖では牡蠣が定番でしたが、季節のこともあって手軽に購入しやすい豚肉やあさりと調理しています。

本当の自由への渇望

旅行ではなく異国での生活を経験してみると、私の場合は思い入れがあるからといって移住をしたいのではなく、あくまでも異邦人として「暮らすように旅をする」こと、生活の中心拠点は日本の都市がいいということを実感しました。

もし当時、日本での固定費が高く、稼ぐことへのプレッシャーが強かったら、異邦人として生活を覗き見るような贅沢な経験はできていなかったと思います。

また、良いことばかりではなく、離島の冬の天気があれほど風が強く、曇り空が続くと冬季うつに近い状態になって気分が落ち込むとは予想していませんでした。

大好きな国や地域で就職や起業ができたとしても、その場所で生活を維持するためには現地に留まって働き続けなければなりません。それはそれで素晴らしい生き方ですが、私が求めていた理想の暮らしとは違いました。

私が本当に望んでいたのは、ふだんは日本の都市でなるべく質素に暮らしつつ、行きたいときに行きたい場所へ行ける自由な生活でした。

固定費の削減は自由な暮らしを実現させるための一歩

時間や場所に縛られない暮らしを実現するためには、働き方を見直す必要があります。

私たちの場合は、年単位でIT関連の副業をしていたこともあって、たまたまタイミング良く夫婦ともに場所を選ばずにできる仕事へ移行することができました。しかし、誰もがすぐに同じ働き方を選べるわけではありません。

私たちの仕事も再現性が低いので、別の誰かに教えたり任せたりすることはできないと実感しています。もし、安定するまでに長期間かかっても良いのなら、ブログ運営だけは相性がいいと感じています。

日本人の識字率は99%以上とされており、動画の時代でも文字から情報収集をする人が多いので意外と可能性があります。広告からだけではなく、寄稿の依頼も含まれるので、私たちも会社の事業のひとつに入れているくらいには収入源となっています。

固定費を下げることは職業に関係なく、簡単に取り組めます。毎月必ず出ていくお金が少なければ、転職や独立、それに繋がるような副業への挑戦もしやすくなります。働く時間を減らしたり、長めの休暇を取ったりすることへの心理的なハードルも下がります。

振り返って考えてみると、私たちが求めていた自由を実現するためにやっていて本当に良かったのは、身軽に行動するために固定費を抑え続けたことでした。

固定費を抑えるための家計の見直し方法

固定費を抑えると聞くと、生活の質を下げたり、我慢を増やしたりするイメージがあるかもしれません。しかし、極端なことはなにひとつしなくて大丈夫です。

自分たちにとって必要なものにはお金を使い、優先順位が低いものにはできるだけお金をかけないようにしています。その積み重ねによって、毎月必ず出ていくお金を低く保つことを大切にしてきました。

それぞれの個人や家庭によって必要なものは違います。ここでは、私たちの例としてまとめました。

家賃

家賃は家計のなかでも特に大きな固定費です。家賃の一般的な目安は、手取りの1/3以内とされていますが、物価の上昇のことを考慮すると、できるだけ低く抑えたほうが暮らしに余裕が生まれます。

私たちの場合は、築年数が古くても家賃が低く、夫婦で無理なく暮らせる賃貸住宅を選びました。最新設備はありませんが、部屋はシンプルで静か、日常生活には十分で気に入って暮らしています。

契約前に大家さんに家賃交渉し、礼金の上乗せをすることで通ったので、今の新規募集よりも1万円以上安く住めています。

新築や便利な立地、広さや設備にこだわれば、家賃は簡単に数万円単位で上がってしまいます。もちろん住まいに何を求めるかは人それぞれです。ただ、家にいる時間の快適さよりも、旅行や将来の自由にお金を回したいと考えるなら、住居費を見直す効果は非常に大きいです。

家賃を毎月3万円抑えられれば、年間では36万円になります。これは、近場の海外旅行なら数回分、航空券や長期滞在の宿泊費の一部にもなります。

人生は長いので、賃貸に住み続けるのか持ち家を購入するのかは、理想のライフプランをよく考えて決めると後悔が減らせます。

私たちも将来的には、持ち家を一括で購入したいと考えていますが、高齢者向け住宅などの選択肢もあるので、しばらくは無理に住み替えず、今の賃貸住宅で暮らせるだけ暮らす予定です。

自家用車

地方で暮らしている、未成年の子どもがいるなど、日常生活で車が必須の環境でなければ、車を所有する必要性は下がります。

車は購入費だけでなく、駐車場代、保険料、自動車税、車検代、ガソリン代、修理代など、維持費が継続的にかかります。さらにお金の問題だけではなく、運転中に事故を起こし、加害者側になるリスクもあります。

車や運転が好きな人にとっては価値のあるものですが、そうでない人にとっては、費用も責任も大きな負担になりがちです。

私たちは車を持たないぶん、必要なときはタクシーを使うと割り切って生活しています。毎月の固定費を抱えるより、必要な場面で多少割高な移動手段を選ぶほうが、結果的に気楽で自由だと感じています。

光熱費・水道料金

光熱費や水道料金は基本料金があるため、完全にゼロにはできません。しかし、契約内容や日々の使い方を見直すだけでも無駄な出費は減らせます。

たとえば、使っていない家電の待機電力を減らす、エアコンの設定温度を極端にしすぎないといった小さな工夫です。ただし、真夏や真冬にエアコンを使うことは無駄ではありません。健康を守るために必要な出費なので、無理に我慢しないようにしています。

私たちは昼間は同じリビングで過ごし、夜は同じ寝室で寝ているため、冷暖房を使う部屋が分散しにくい暮らしです。

料理をするときは、基本的に弱火から中火で調理しています。強火にしなくても美味しく仕上がる料理は多く、火力を上げすぎないだけでもガス代を抑えられます。

一方で、水道料金は家計を大きく圧迫するほど高額になることが少ないため、流しっぱなしにはしない程度で過度に気にせず使っています。

スマホの通信費

スマホ代は最も見直しやすい固定費です。私は2014年頃から格安SIMサービスを利用しています。

大手キャリアで高額なプランを契約したまま、実際にはデータ通信をあまり使っていない人も少なくありません。自宅にWi-Fiがあり、外出先でも動画を長時間見ないのであれば、より安いプランに変えられる可能性があります。

通信品質やサポートが必要な場合もあるため、単純に最安プランを選ぶのではなく、自分の使い方に合った契約を選ぶことが重要です。

私は楽天モバイルとpovo、LINEモバイル2回線を使い分けています。夫は日本通信SIMです。2人分の5回線を合計しても月額2,800円程度におさまっています。これからも定期的に見直しをしていきます。

スマホの本体料金

スマホ本体も気づかないうちに固定費化しやすい出費です。

最新機種を分割払いで購入し、さらに数年ごとに買い替えると、毎月の通信費に本体代が上乗せされ続けます。2年で返却するプランは、返却時に画面割れや故障があると、追加の修理費用やペナルティがかかり、買い替え条件もあるので注意が必要です。

私は15年近くiPhoneを使っており、近年はAppleのオンラインストアで数年に一度購入しています。スマホ本体の性能が自分にとって必要なものなら、5〜6年以上使えるくらいの高性能なものを選んだほうが後悔しません。

iPhoneは当初より非常に高額になってきているので、お得に購入するための工夫が必要です。楽天市場で楽天マラソンや楽天スーパーセールが開催される日程に合わせて、他のものを買うついでにAppleギフトを買って数年単位で積み立てていくのが実際に良い方法でした。分割で購入をしなくても、好きなタイミングに好きな機種を選べて楽天ポイントも貯まるのでお得です。

私は、新しく買った最新機種はメイン使い用、ひとつ前に使っていた機種をサブ使い用として2台持ちをしています。

現在は、iPhone16ProとiPhone11Proです。11は6年半ほど使っていてだんだん熱を持つようになってきたので、今年はiPhone18Proが発売されたら購入しようと考えています。

もし下取りに出す場合は、Appleの下取りは査定が厳しいので減額対象として判定されやすく下取り価格も安すぎるので、手放し方は別の手段が良いかもしれません。

インターネット固定回線(Wi-Fi)

インターネット固定回線は、私たちにとっては生活と仕事のために必要な固定費です。マンションやアパートの場合、4千円程度に抑えることができます。

マンションのポストには「光回線が導入されました」「この建物限定」「工事費無料」といった案内が入ることがあります。ただ、こうしたチラシは管理会社からのお知らせのように見えても、実際には代理店の営業であることが少なくありません。

特定の窓口へ連絡すると、その場で契約を勧められるため、ほかの料金や条件を比べにくくなります。

私も初めてひとり暮らしを始めた際は無知だったので、こうしたチラシから申し込みましたが、その後は自分で回線会社を調べて、最終的にSo-netと直接契約しています。

代理店を通さず公式サイトから申し込めば、契約先や料金、キャンペーン条件を自分で確認できます。電話で急かされながら決める必要もありません。

So-net 光は、現在の1ギガプラン(S/M/L)や10ギガプランなら契約期間の縛りや解約金がありません。

ただし、工事費を分割で支払っている途中に解約する場合は、残っている工事費を一括で支払う必要があります。それでも契約更新月を覚えておく負担がないのは安心です。

海外滞在中もホテルの部屋にWi-Fiが入るかを重要視しています。古いホテルだと、公式情報にはWi-Fiありと記載があっても、実際にはほとんど電波が入らないことが未だにあります。

その場合は、iPhoneからのテザリングを使っています。SIMカードやeSIMは、Trip.comやKKdayを通して必要な期間分契約しています。テザリング可能と記載のあるものを選ぶのがポイントです。

サブスク

動画配信、音楽、電子書籍、アプリ、クラウド保存など、月額制のサービスは便利です。

一方で、ひとつひとつは少額でも、複数契約すると毎月数千円から1万円以上になることもあります。

サブスクは便利なものだけを残し、使っていないものは解約する。この習慣だけでも、固定費はかなり整います。

「いつか使うかもしれない」「以前はよく使っていた」という理由だけで契約を続けているサービスは、一度整理してみる価値があります。

さらに、意外と見落としがちなクレジットカードやキャリア決済の内訳をひとつずつ見直してみると、すっかり忘れていたり解約していたつもりでいたサブスクが見つかるかもしれません。

固定費を抑えると人生の選択肢が増える

固定費を低く保つ最大のメリットは、毎月の支出が減ることではなく、心の余裕を増やすことにあります。収入が減ったとしても、生活を維持しやすくなり「今の働き方を続けなければならない」という圧力が弱くなります。

長期旅行に行きやすくなる

毎月の生活費が高いと、旅行中も日本の家賃や固定費が重くのしかかります。反対に、毎月の支出が低ければ、旅行に必要なお金を貯めやすくなり、旅先で過ごす日数も増やしやすくなります。

数日間の旅行だけでなく、数週間から1か月程度の滞在も、現実的な選択肢になっていきます。

海外滞在を試しやすくなる

海外で暮らしてみたいと思っても、いきなり移住を決める必要はありません。行ってなんとかなる人もいれば、なかなか仕事が見つからずに困窮して帰国さえ厳しくなる人もいるので、ある程度の計画性は持つのが良いです。

まずは短期滞在をしてみます。次は少し長く滞在してみる。その国の生活や物価、気候、人との距離感が自分に合うかを確かめる。私の場合は、やはりまずは食べ物との相性が重要です。

固定費が低ければ、こうした試行錯誤にお金と時間を使いやすくなります。

転職や独立に踏み出しやすくなる

固定費が高いと、収入が途切れることへの不安が大きくなります。そのため、本当は転職したい、独立したい、副業を育てたいと思っていても、今の仕事を辞められない状態になりやすいです。

生活費を低く保てていれば、収入が一時的に減っても耐えられる期間が長くなります。これは、転職や独立を成功させるための精神的な余裕にもつながります。

働く時間を減らせる

収入を増やすことだけを考えると、働く時間を増やす方向に進みがちです。しかし、毎月必要なお金が少なければ、無理に長時間働かなくても生活を維持しやすくなります。

働く時間を減らして、旅行の計画と準備をする、ブログを書く、勉強する、体を休める。夫婦で過ごす。固定費を抑えることは、こうした時間を手に入れるための方法でもあります。

独立してからは年中休みなしとはいえ、会社員のときとは環境が違うので、体感時間としては減っています。

まとめ

固定費を抑えることは、我慢ばかりの節約生活を選ぶことではありません。自分たちにとって優先順位の低い出費を減らし、その分を旅行や挑戦、自由な時間に回すことです。

私たちが叶えたかったのは、タワマンに住み高級車に乗るような、キラキラとした豪華な暮らしではありませんでした。20代〜30代で今の状況を手に入れていたならまた違ったかもしれませんが、地味な暮らしの良さが手放せない価値観がすっかり身についてしまいました。

ふだんは日本で無理なく生活しながら、行きたいときに行きたい場所へ行き、少しだけその土地の暮らしに触れられることが仕事のやりがいにも繋がっています。

収入を増やす努力ももちろん大切です。ただ、収入が増えるまで自由を先送りにするのではなく、今の生活上でゼロにはできない固定費を見直すだけでも、人生の選択肢は増えていきます。